可能になること
可能になること
FT(フィンガー・テスト)を修得されますと、以下のようなことが可能となります。
- 異常を起こしている経脈、経穴の位置や腹診部の異常が肌に触れるだけ、或いは肌に触れなくても(着衣の上からでも)分かるようになります。特に鍼治療においては、取穴が2ミリ外れると治療効果が落ちると言われていますが、そのようなミリ単位での正確な取穴が可能になります。
- 愁訴のある場所、大きさ、苦痛の程度が患者さんに尋ねることもなく分かり、治療効果もその場で分かり、来院する毎に、どの程度良くなっているのか的確に捉えることができます。
- 施術部位に鍼が適するのか、灸が適するのか、或いは両方必要なのか等、見分けることができます。
- 投与しようとする西洋薬・漢方薬が効くかどうか瞬時に分かり、また塗布剤の適否も分かります。
- 脉診ができなくても、五臓六腑の寒熱虚実の診断ができるようになり、 鍼灸においてはその診断結果に基づいた効果の高い経絡治療が簡単に習得出来ます。
- 漢方的診断法、治療法はシステム化されていて、そのシステムに則った治療を行えば、誰でも高い治療成績を上げられるよう、工夫されており、フィンガー・テストを利用すれば、自分独自の治療法を創造することも可能です。
以上、 FTは鍼灸治療以外のどの分野にも応用できる画期的な診断法です。
鍼灸師以外の各分野の方々にもFTが応用できるよう適宜指導しております。
推奨No.1の感冒治療
高崎医学 第66巻 平成28年 八千代診療所 飯島 耕作
はじめに
医師になって感冒治療ほど納得できないものは無かった。理由はヒトの見方を知らなかったからだった。医学部で習った診断学は目で見える範囲を対象としたもので、目で見えない経脈(ヒトは経脈によって生かされている)は完全に対象外であった。60歳に近づくと来し方行く末の事で頭の中は騒乱状態になった。縁あってか東京入江FT(入江フィンガーテストの略)塾で勉学し、ご指導賜わった事で診断学の大転換となった。ヒトを診てヒトが診られるようになったのである。やっと感冒治療が納得できたのである。
中国古代、戦国漢時代の医人たちは陰陽五行を基礎に経脈診断治療を完成、現在でも寸分の狂いも無く当時のままの姿を保っています。残念なことに、経脈診断する技巧は伝えられませんでした。現在、ヒトを診るには入江FTシステムをマスターすることで中国古代の医人たちと同等の能力を持てることになります。要するに、今、目の前にいる病人、それは2000年前の病人と同じ症状であり、その病人のからだと会話することによってしか古代の医人と会話する方法はないと悟るべきである。会話する前に偏見をもっていればコミュニケーションは出来ない。会話するには簡単な技法を習得すればよい。それにはFTがベターである。経脈の認識はFTをマスターされればすぐ理解出来るということが常識なのです。
漢方医学と西洋医学は全く異なった原理原論で作られた独立した医学である。医学の世界には、ヒトに関するものも動物に関するものにも2種類の医学がある。西洋医学で漢方医学は解明できず、その逆も今のところ困難である。と認識して置くべきである。西洋医学を基礎に、その欠点を漢方医学で補強することが現在の私どもにとって最も望ましい姿なのではないでしょうか。
入江FTを発明された入江 正先生提唱の経脈基本概念4原則を示します。
1.経脈とは生きている証である。
2.経脈とは病いのとりつくところである。
3.経脈とは病いを表現するところである。
4.経脈とは病いを治療することが出来るところである。
感冒症状の分析
局所症状から全身症状まで多彩な感冒症状ではあるが原因として、単純にウイルス感染・細菌感染・アレルギーが思いつく。日常臨床ではこの三者とも症状は同じで区別して対処することは困難であるが、FTではこと細かに分類して詳細に説明出来るのが特徴である。
FTでは診断小道具として4種類のカードを用意している。感冒診断用のスパイラルカード、アレルギー・身体に不適な物質の診断用のアレルギーカード、感染症診断用の細菌カード、水毒診断用の水毒カードである。極めて有用である。その他試用中のストレスカード等がある。
カード診断の前に過去・現在の冷えを除去したほうがよろしい。冷えは子供から老人まで男女とも観察されます。冷え除去の理由は冷えのstが強いとカード診断の妨げになる印象を持つからである。冷え対策については参考資料をお読みください。〔FTの反応は滑らかに動く意味のsmooth(略してsm)と、滑らかに動かず粘りつく感じや重たい引っかかる感じの抵抗感の意味のstichy(ステッキーで略してst)の2種類。smは異常なし、stは異常ありと明解〕患者の手掌(女性は左手、男性は右手)にカードを載せる、stならそのカードに関係する病変ありと診断する。複数のカードにstと生り得ることもある。FTではsm、stの判定は瞬間的です。実行する前に慎重な繰り返し判定します。つづいて、各種カードの対処方法を示す。
スパイラルカード
感冒診断に必須のカードである。オレンジ・ピンク・レッド色の3種類のカードがある。レッド・カードはインフルエンザ、オレンジ・ピンク・カードは感冒に反応することが多い。
机上に風邪ウイルスー覧表を置いて目視しつつstウイルスを決めるのが便利です。感染何日目かも記録します。直ちに感冒の鍼灸治療を行ないます。鍼灸治療では奇経治療・経脈治療を実施、各カードのst反応を消去します。FT診で頻出するウイルスはEntero‐virus、Metapneumovirus、adenovirus、HPV18、Mumps……です。急性ウイルス感染では左側奇経群で、常在ウイルス群では右側奇経群で処置します。
経脈エネルギーが正常化したところで適不適診断(最適薬品の選定作業)で薬品を処方します。西洋医学では適不適診断を無視しており臨床作業の欠点となっています。
アレルギーカード
アレルギーカードも非常に有用です。アレルギー物質による身体障害に対し、焼鍼治療・経脈治療を直ちに実施出来ます。
1.花粉症全身に反応を示します、陽池焼鍼灸50回と経脈治療を要することが通常です。2015年11月現在、ブタクサ・アレルギーが猛威を振るっています。PM2.5など大陸の影響かも知れません。
2.飲食物・薬品類・着物・化粧品など個人に有害な物質にはstに反応しますので、使用前に避けることが出来ます。
3.医薬品・サプリメントの一部に不適反応を示し、有害品を避けることが出来ます。
中毒穴である築賓の焼鍼治療も便利です、
細菌カード
細菌カードを全身に接触しstを検索します。stな局所の細菌感染を疑います。細菌カードの眼目は常在菌感染の確認です、ヒトの疾病の殆んどが常在菌感染の結果です。細菌カードstな頭の認知症からstな母趾の痛風まで含みます。常在菌感染を基盤とした新しい診断学を構築することで、途轍もなく理想的な現代医学が誕生する事になります。
常在菌感染進入門戸は(1)口呼吸(2)冷飲食物摂取の習慣に由りますのでヒトは生涯を通じて避ける必要があります。
感冒症状の90%は細菌カードstな常在菌感染症です。目鼻口喉気管肺にstの事が多くマイコプラズマ感染が殆んどで、クラリスロマイシン感受性を示します。口呼吸を止める事が改善のため絶対に肝要です。就寝時にロテープを装着する習慣を付けるべきと考えます。会話中の息継ぎにも口呼吸しないように注意します。冷飲食物による腸管温度環境変化による腸内細菌のトランスロケーションは腸閉塞ショックの誘因として有名な事実です。
その他、肥満や糖尿病、自閉症、食物アレルギー、炎症性腸疾患、がん……などの病気の発症リスクを亢進させると考えられます。
水毒カード
身体の水分代謝異常を示します。日射病ではアレルギーカードと水毒カードがstとなります。経脈・経別治療を要します。
ストレスカード・うつカードなど
試用中ですが極めて有用の見込みです。カード診の作業が終了した所で改めて手掌診全体診を実施、st部位の探索を行なって適当な処置をします。
終わりに
現代医学にはヒトを直接診断する技能がありません。FT感覚をちょこっとマスターするだけの技能で素晴らしい世界が開けるのです。多彩な感冒症状の中に重大な疾患が含まれている可能性があります。日常臨床で簡単にチェックするためにはFTが非常に有用です。特に各種カードの有効活用こそが問題を解決してくれます。十分納得、自信を持って患者さんを指導する事が出来ますし、患者さんのやる気とセルフケアを引き出せるのです。
快適な日常生活を心から楽しむことが出来るのです。
重要なことは、複雑な人体の機能を理解し、最適の診断治療を極める漢方医学(FT医学)を全ての領域に取り上げ展開する必要があります。その診療実績を評価検定することで、西洋漢方医学の統合的基本構造が明確化されます。話題のPrecision Medicineの誕生が期待されるのです。経脈を利用し、個人に最適化した医療の論理化が根幹と考えるからです。
参考
1.入江正:臨床医学原論-入江FTによる診断と治療-、入江正、大阪府岸和田市、1990。
2.飯島耕作:冷え症の診断治療経験高崎医学63:ll7-120、2013。
3.飯島耕作:入江FTの紹介-漢方医学診断治療レベルアップ-高崎医学65:109-111、2015。
※飯島先生が所属されている高崎市医師会の会報「高崎医学」で発表されたものを、御了解を得て掲載させて頂きました
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